関東平野から北岳

実施日:2024年10月26日(土)〜27日(日)
山 域:南アルプス北岳
参加者:高柳 他1名
行 程:【10/26】9:50芦安駐車場(10:00発)→11:10広河原→14:00白根御池小屋 【10/27】5:30白根御池小屋→7:30肩の小屋→8:30北岳山頂(9:00発)→9:50八本歯コル→11:30白根御池小屋(12:00発)→13:20広河原(14:00発)→15:00芦安駐車場

まだ暗闇の宿舎を出発して圏央道に乗り、薄明の関東平野を快調に飛ばす。八王子JCTでやや渋滞したが中央道も滞りなく山間を抜けていき、甲府盆地が開け、そして南アルプスが見えた。夢のような景色だと助手席の彼は言う。緩やかに降りながら眺める山並みの起伏は、二ヶ月ぶりの私の目にも新鮮だ。
盆地の底まで降りて振り返れば富士山が見える。富士川を越えて南アルプス前衛の山が迫ってきた。芦安駐車場を通り過ぎて夜叉神峠方向まで進んでしまったことに気がつき、慌てて引き返すと目的のバスの時間まで10分を切っていた。
辛くも乗り込んだ夏シーズン終了間近のバスは賑やかだ。外国人の登山客もいて、彼はスペイン人と打ち解けている。そこで入れ知恵されたのか、朝焼けを山頂から見たいから肩の小屋に予約を変更できないかと曰う。インドの方はリクエストに躊躇がないのだ。広河原に着いてから予約システムに問い合わせるができないとのことで納得させる。私はタンネに囲まれた静かな白根御池でゆっくりしたいと思っていた。

 

今年4回目の広河原はすっかり秋の装いだ。時間はたっぷりあるから思う存分紅葉のモザイクを楽しみながら登っていく。ベニヒカゲが舞っていた沢沿いの草付きは枯れている。白根御池周辺のカンバはすっかり落葉し、寒々しい。今年の夏も終わってしまった。
はじめての白根御池小屋は綺麗で広々としている。しばらくまどろんだあと、大樺沢まで散歩した。目の前の紅葉した鳳凰三山は美しいが、緑と花々の消えた沢は寂しい。
 夕食は17:00から生姜焼きだった。温かい小屋で目に鮮やかな食事をとるのが楽しい。彼も箸の使い方にだいぶ慣れたようだ。クライマーの一行が賑やかだ。
消灯時間(20:00)まで書棚を物色し新田次郎、石黒佐近、田部重治と並ぶなかで目についたのが『雁峠だより』(加藤司郎著)。公務員として働きながら山小屋を修繕し、小屋番をするなかで山と山人を観察した著者のエッセー集である。活字で随分赤裸々に語っている。翌日の弁当を受け取り、布団に入った。
翌朝は5:00から朝食で、西京焼きといくつかおかずの並ぶ食事だった。まだ暗闇の中出発し、草滑りを登っていくと朝焼けになった。霜柱があがり、氷柱が下がっている。稜線に上がると西から容赦なく冷たい風が吹きつけてきた。肩の小屋で小休止。営業をちょうど終えたようで片付け作業に入っているようだった。
風裏で時々息をつきながら歩いて山頂に着いた。私たちの他に二人しかいない広々とした山頂である。その二人はインドを放浪したとかでインドを誉めている。予想よりも天気はよく、雲ひとつない景色を彼に見せることができた。これが、山梨の山と森だ。
おにぎりの弁当を食べ、記念写真をたっぷり撮ってから、八本歯コル方向へと降る。枯野の岩肌に見るものもほとんどない。バットレスにクライマーが張り付いているのが見えた。階段に注意しながらゆっくり大樺沢を降りた。
白根御池でしばらく休憩したあと、足はやに降りるが彼は膝の古傷が痛むという。片足でけんけんしながら降りたるするから困る。なんだかんだ余裕を持って広河原につき、バスに乗り込んで芦安まで。天笑閣で汗を流した。
コナズコーヒーでハンバーガーに食らいついてから大渋滞の中央道に突入し、インド映画音楽で眠気を飛ばしながら八王子JCTまでの渋滞をなんとか抜けた。ガラガラの圏央道を飛ばしてつくばまで。
都内に住んでいたらこのような慌ただしい週末登山になるのだろう、出不精な私はすぐに山など行かなくなるに違いない。
ところで彼は研究所のあるニュージーランドへこの一週間後に飛んだ。志を同じくする彼と歩きながら得た刺激はとても大きい。また世界のどこかで一緒に山を歩きたいものだ。

 

(高柳)

 

2024年10月26日