時間切れの大渚山バックカントリースキー

実施日:2025年4月5~6日
山 域:頚城山系
参加者:中安

私は66歳の誕生祝い、パートナーの小池氏は定年退職祝いということで、それぞれ勝手に理由を付けて、また性懲りもなくバックカントリースキーに出掛けた。彼とは今シーズン4回目の山行だ。
今回は、小谷温泉の山田旅館泊まりという豪華版だ。山田旅館は450年前から営まれている湯治宿で、江戸期建築の旅館建物は国の登録有形文化財に指定されている。宿の裏から自然湧出する温泉は効能豊かな療養泉だ。下山後が特に楽しみだ。
今年は異常に雪が多い。例年の今頃は、山田旅館の周りの雪は解けて土が剥き出しになっているのだが、今年は分厚い雪で覆われ、旅館の裏からスキーを付けて登ることができる。こんなチャンス、滅多にない。
夏道沿いに尾根を登ると、途端に額から汗が噴き出す。雪は厳冬期並みだが、大気はやはり春だ。日差しが強く、今日は日焼けしそうだ。暫く登ると支尾根があちらこちらに派生しており、地形が複雑でルートファインディングが難しい。下りでガスったら厄介だ。地形を頭に叩き込みながら登る。
やがて地形は平坦となり、雪原となった鎌池に降り立つ。そこから斜面を斜めに登ると林道に出る。ガードレールの位置から推測すると、積雪は4メートルはあろうか。5月になってもスキーができそうだ。林道を進み何回か尾根を回り込むと前方遥かに、目指す大渚山が姿を現す。鋭く切り立った山だ。ほんとうにスキーで登れるのだろうか。不安になる。
湯峠から林道を外れて、森林を尾根沿いに進む。1365メートルピークに到着すると、その先には大ギャップがあった。
「またここを登り返すのかよ!」
 二人から同時に出た言葉だ。迷うことなくここから引き返すことにする。高齢の我々には、大渚山日帰り往復なんて、やはり無理だった。
大渚山へは登れなかったが、後悔はない。下りはやはり楽しい。ザラメ雪だが、適度にターンができる。湯峠まであっという間だ。ダブルストックで林道を喘ぐ。腕が痛い。鎌池への下りでちょっとルートを間違えるが、地形を読み込んですぐにリカバリーした。パラレルターンで尾根をぐんぐんと下る。
山田旅館の屋根が見えてくると、もう安心だ。写真撮影会をする余裕ができた。旅館の駐車場からは、私たちを見上げる人たちが見える。「どうだ、羨ましいだろう」と言いたくなった。
旅館の裏手は雪壁になっており、お尻を着かないと下りられない。「ここが一番の難所だね」と、先に下った小池氏が振り返って叫ぶ。
旅館に着くと、まずビールで祝杯を挙げ、そして効能豊かな温泉へ飛び込む。鉄臭い浴槽に浸かると、これがまた気持ち良い。そして超豪華な夕餉の時間だ。フキ味噌とウドのお浸しに春を実感する。ああ、日本人に生まれてきて良かった。
翌日は朝から雨。でも、スキーはしたい。栂池高原スキー場まで車を飛ばし、シニア半日券を購入して、ゲレンデスキーを楽しむ。昨日のダメージが残っているため、無理は禁物だ。
美味しい手打ち蕎麦を食べてから、大町温泉でまた入湯する。小池氏は生ビールを飲んでご機嫌である。なんとも豪華な大人の休日であった。
(中安)


 

2025年04月05日