妙高連峰最奥の秘境、天狗原山

実施日:2025年8月2日(土)
山 域:頚城山系
参加者:中安

毎夏、私は白馬村落倉の山小屋をベースに沢登りや海水浴を楽しんでいる。白馬周辺の山はほとんど登ってしまったので、最近は頚城山系妙高連峰まで遠征している。一昨年は火打山、昨年は妙高山、そして今年は金山へ登ろうと思った。
金山は人気の火打山や妙高山と比べてマイナーな山だ。妙高連峰最奥の秘境とも言われ、入山者は少ないが高山植物の宝庫でもある。今年はこれを狙った。
小谷温泉を通り過ぎ、午前七時四十分に金山登山口に着くとすでに乗用車が十台駐車している。意外と登山者は多いようだ。私はその登山者たちの最後発である。もっと早く家を出ればよかった。
登山口から五百メートルほどは可憐な紫色を呈したエゾアジサイが満開だ。つい歩みを止めて見惚れてしまう。地図には水場とある鞍部に着くが、飲めるほどの水は流れていない。樹林帯に覆われ蒸し風呂のようなブナタテ尾根を登る。シャツは汗で飽和状態だ。湿地帯に現れるミズバショウやオオバミゾホオズキ、ソバナ、ズダヤクシュが一瞬だが疲れを癒す。さらに登るとキヌガサソウの群落が出現する。大きな葉っぱの真ん中に大きな白い花が咲き、まるでおとぎの国に来たようだ。
狭い沢の中を登る。だんだんペースが落ちてきた。雲行きは怪しい。一九四九ピークの直下はガレている。ロープが垂れているが不完全で、一番やばい所にはロープがない。岩に爪を立てて何とか通過するが、体力の消耗が激しい。ピークを通過するといつしか樹林帯が消えて草原の中を縫うなだらかな登山道となる。足元に白いヤマハハコが咲いている。別名エーデルワイスというやつだ。いよいよ亜高山帯に突入した。そこからシナノナデシコ、ミヤマキンポウゲ、タカネニガナ、ハクサンチドリ、シナノキンバイ、アカモノ、ハクサンフウロ、ウサギギク、ツマトリソウ、クルマユリ、チングルマ等が色とりどりに咲き乱れ、ああ、美し過ぎて目が回りそうだ。いや、本当に目眩がして倒れそうになる。糖尿病の治療薬の副作用だ。血糖値が下がりだしたのだ。
立ち止まりながら這うようにして標高二一九七メートルの天狗原山山頂に到達する。ガスの切れ間に焼山は見えたが、金山はガスが掛かっており見えない。あと四十分で金山なのだが、もうだめだ。これ以上進めば日没までに下山できない。それに、遠くで雷鳴も聞こえる。ここで引き返すのが賢明だ。
天狗原山を後にするとすぐに大粒の雨が降ってきた。雷にやられる前に樹林帯まで急ぐ。雷雨は本降りになるが、大汗を掻いているので雨具を付けても意味がない。急なブナタテ尾根を水場まで下ると、雨は止んでいた。ブナの根元で落ち葉を褥に睡魔が襲う。疲労困憊して登山口に下山すると、車は二台しか停まっていなかった。疲れ過ぎて吐き気がするので、温泉にも入らずに白馬村落倉の山小屋へ直行する。シャワーを浴びたら飯も食わずにそのまま床で寝落ちしてしまった。
翌日は、糸魚川市のびびら浜へ海水浴に行く。小屋から車で一時間だ。登山の後は海水浴へ行くのが私の夏山登山の定番となっている。浮き輪で海に漂っていると、無重力になった筋肉痛の足がとても気持ちが良い。
今回、体力の低下を思い知ったので、帰ったら十年ぶりにジョギングを再開しようと思う。
(中安)



 

2025年08月02日