夏山合宿 薬師岳

実施日:2025年8月15日~17日
山 域:北アルプス 薬師岳
参加者:羽田、青木、榑林、勝俣

「今年こそ、薬師岳に登りたい」
そんな和子さんの一言から始まった、今年の夏山合宿。気心の知れたメンバー4人で、北アルプスの静かな名峰・薬師岳をテント泊で目指すことにした。
折立登山口に降り立った朝、ザックの重さよりも、みんなの顔に浮かぶわくわくした表情が印象的だった。テント、バーナー、食料を分担して詰め込んだザックはずっしり重かったけれど、その重さもまた、旅の一部に思えた。
樹林帯の急登では、誰かが「ここが正念場だな」と冗談を飛ばすたびに笑いが起きる。黙々と登る時間もあったけれど、ふと顔を上げれば誰かがいて、同じ空気を吸って、同じ景色を見ているという安心感があった。
太郎平小屋に着いたのは午後。早速生ビールを呑む。1杯1300円だ。なんと富山県警の山岳警備隊が生ビールを作ってくれるのだ。太郎平キャンプ場の広々としたテン場で、4人がかりでテントを立てる。風が通り抜ける気持ちのいい場所に、我が家のような空間ができていくのが、なんとも楽しい。
夕方には、持ち寄った食材でささやかな宴。チーズをつまみにバーボンを飲んだり、山ならではの贅沢な時間が流れた。沈みゆく太陽が稜線を染めていく景色を、みんなは無言で見つめた。誰かがポツリと「この時間が一番好きかもな」と呟いたのが、やけに胸に残っている。
翌朝は暗いうちに出発。ヘッドランプの灯りの中、黙々と登る稜線。そして、山頂。薬師岳の広々とした山頂に立ったとき、言葉にならない景色に、誰からともなく「来てよかったな」と小さな声が漏れる。あの瞬間、4人が感じたものは、きっと言葉を超えた「共有」だったと思う。
太郎平キャンプ場に戻り、テントの受付をする。10時30分だ。係りの人からこの時間なら余裕で下山できますよ。と言われる。分かってはいる。しかし、まだまだ山でゆっくりして、酒を飲みたいのだ。
昼食を済ませ、また太郎平小屋に生ビールを呑み行く。やはり旨い。テントに戻るとすぐ上の薬師平にクマが出たとのことで騒がしい。さすがにここまでクマは来ないだろうと話をしながら寝床に入る。
3日目が一番いい天気だ。下山後、重たいザックを下ろしたときの開放感。そして、それと同じくらい大きな、「終わってしまった」寂しさ。仲間との薬師岳テント泊は、ただの登山じゃなかった。笑いと苦労と絶景が詰まった、人生の中の一枚の特別なページだった。
帰りの道で子熊を見かけた。そして、帰って2日後に太郎平キャンプ場でクマが出て、食料とテントを持っていってしまったとニュースが流れていた。九死に一生を得た。
いままでトレランなど、めいっぱいの行程の山行が多かったが、ゆったりとした山行は最高でした。はまりそうです。
(羽田)



 

2025年08月15日