蓼科山バックカントリースキーの報告

実施日:2022年3月2日(水)

山 域:蓼科山

参加者:中安正議、勝俣和子、小林善孝

行 程:8:50白樺高原国際スキー場駐車場→9:20ゴンドラ終点ゲレンデトップ→10:10七合目鳥居→12:40将軍平→14:00九合目→14:03将軍平→15:16七合目鳥居→15:45スキー場チケット売り場→16:00白樺高原国際スキー場駐車場

2月26日の尾白川下流域ガンガノ沢錦滝アイスクライミングから四日目、体力は回復した。さあ、次はバックカントリースキーだ。今年に入ってから、アイスクライミングとバックカントリースキーを毎週交互に行っている。いや、今回は中三日だ。たぶん、怪我をするまでスキーとアイスは止めないだろう。
今年は雪が多い。例年なら藪が出ていて滑れないところも滑れるかもしれない。こんなチャンスを逃すわけにはいかない。以前から気になっていた蓼科山を滑ってみようと思った。今回は平日の水曜日だ。だめもとで、LINEで参加者を募ると勝俣和子さんの手が挙がった。さすが、主婦に曜日は関係ない。そして、もう一人、曜日に関係のない人の手が挙がった。小林善孝さんだ。彼も私と同じく定年退職して自由気ままな生活を送っている。
私はバックカントリースキー、勝俣さんはスノーシュー、そして小林さんは古式ゆかしくワカンといういで立ちで参加することとなった。果たして足並みは揃うのだろうか。荷物を下ろしてバックドアを閉めるとき、「頭に気を付けて!」と、声を掛け合う。先週、当会の会員がバックドアに頭をぶつけて五針縫うという怪我をして以来、この言葉が当会の合言葉となった。
リフト券売り場へ行き、ゴンドラリフトの乗車券を買う。ゴンドラリフト1回券は大人600円だが、60歳以上はミドル料金で540円だ。私と小林さんは高齢者となった恩恵を素直に享受する。なになに? 70歳以上はシニア料金で350円! ちょっと離れていた勝俣さんに大声で叫んでしまった。「和子さんは350円でいいんだってさ!」
さて、待ち時間なしのゴンドラであっという間にゲレンデトップに降り立つ。私はスキーにシールを貼って歩く準備をするが、両名はスノーシューとワカンを履く気配がない。「スノーシュー履いた方がいいと思いますよ」と、助言するが、つぼ足で大丈夫だと言う。しかし、10メートルも歩かないうちに、スノーシューを履かねば進めないことを悟ったようだ。

 雪面にはスキーのシュプールはあるが、足跡はない。私はスキーで進むが、スノーシューとワカンは苦戦している。特にワカンの小林さんは雪面を踏み抜いて膝まで雪に潜って悪戦苦闘している。今回は、皮肉にも雪山におけるスキーとスノーシューとワカンの良い性能比較テストとなった。
ワカンの小林さんにペースを合わせてゆっくりと登る。ストックを持って来なかった小林さんは、勝俣さんからストックを一本借りて深雪でバランスを保つ。空は快晴で燦々と太陽の光が降り注ぐ。サングラスを忘れて来た小林さんは、私から借りたゴーグルを掛ける。多少のトラブルは仲間でフォローできる。持つべきものは友である。ときどき立ち止まってパーティーが離れないように注意して登る。パーティーが離れてしまうと、各人がルートファインディングもする羽目となり疲労が倍増する。パーティーをばらけさせないで登るのがパーティー登山のコツだ。「将軍平まで、あと五分!」と言っても誰も信じない。まだかまだかと待ち望んだ将軍平にやっと着き、そこでランチタイム。そして三人で記念撮影。樹林帯の彼方に蓼科山の山頂が垣間見える。仕方なく私一人で頂上へ向かう。スキーなので登頂してからでも追い付くと思った。しかし、将軍平から頂上への道は、予想外に手強かった。すぐにスキー登行が不可能な急斜面となり、スキーをザックに取り付けてつぼ足で登る。暫くするとアイスバーンとなり滑って登れない。ザックを下ろして今度はアイゼンを付ける。そんなこんなで時間を浪費してしまい、樹林帯を抜けたあたりで時計を見るとすでに午後二時を回っていた。時間切れだ。登頂を諦めてもと来たルートを下る。
将軍平で再びスキーを付けるが、狭い登山道ではスキーがうまく回せない。思い切って左手の樹林帯を突き抜けると、無立木斜面に出た。素晴らしい一枚バーンに私一人のシュプールを刻み、スキー場まで見える絶景を見下ろしながらパラレルターンで滑り降りる。しかし、快適なスキー滑降は一瞬で終わり、また樹林帯に突っ込む。密生した灌木が進行を拒む。まるで、スキーを履いた藪漕ぎだ。やっと登山道に出たが、ターンできるほどの隙間がない。ひたすら横滑りで登山道を辿る。これでは埒が明かないので、登山道を外れて林間を滑ると、また藪漕ぎだ。馬返しあたりからやっと登山道が広くなりターンができるようになった。七合目鳥居に着いてやっと一息ついた。そこから林道を滑り、やがてカラマツ林に入ってスキー場を目指す。林間にはシュプールがあり、それを辿って滑る。ぐんぐんと標高を下げて行くが、あれ? 登って来た時と地形が違う。やがて、そのシュプールは登り始めるではないか。先行者も下降ルートを間違えていることに気が付いたのだ。本来の下降ルートよりかなり東へ逸れたらしい。先月の入笠山に引き続き今回も下降ルートを間違えた。一尾根越えて延々と林間をトラバースしてやっとスキー場に出た。ゴンドラリフトの駅が遥か上に見える。整備されたゲレンデを快適に下って行くとリフト券売り場で小林さんが出迎えてくれた。四十分ほど私を待っていてくれた。
帰途は、つたの湯で疲れを癒しドライブイン国界でとんかつ定食を食べる。私はそこでうっかり生ビールを注文してしまったので、そこから小林さんが私の車を運転する。やはり、持つべきものは友なのである。

2022年03月02日