雪質最高! 入笠山
実施日:2025年2月11日(火)
目 的:バックカントリースキー
山 域:南アルプス
参加者:中安、他1名
昨年十月、みずがき山リーゼンヒュッテにて開催された山梨県山岳連盟総合研修会の懇親会の席で、日本山岳会山梨支部の小池氏と意気投合した。年齢は六十歳還暦、私に近い。以前、彼は北海道に勤務しており、バックカントリースキーを嗜んでいたという。おまけに私と同じ町内に住んでいるという。私の自宅から百メートル弱のところだ。これはもう、一緒にバックカントリースキーに行かない訳にはいかない。では手始めに、入笠山へ行こうということに相成った。
自宅から車で一時間、富士見パノラマリゾートの駐車場に到着する。こんな近くにバックカントリースキーエリアがあるなんて、嬉しいではないか。ゴンドラは片道二千円、往復だと割引が効いて二千二百円。我々もスキーヤーの端くれ、二百円を節約して滑って降りることに躊躇はない。
ゴンドラ山頂駅を降りるとそこは光り輝く銀世界。雪質は最高だ。スキーを履くと体調の悪さなど吹き飛んでしまうから不思議だ。
例年、入笠湿原は藪や杭が露出しておりスキーでは滑れないが、今回は雪がたっぷりあって、絶好のスロープとなっている。おまけにパウダーだ。今年はスキーの当たり年だ。入笠湿原までパラレルターンで滑り降りて、そこからシール登行だ。入笠山登山口で休憩していると、ヒュッテ入笠の食堂からシチューのいい匂いが漂ってくる。
入笠山への登りは花畑の斜面は使わず、北側の尾根道を登る。花畑の斜面は帰る時のお楽しみだ。一箇所、シール登行の限界を超える急斜があり、そこで中安がズッコケる。後続の小池氏は雪の中でもがく中安を教訓に、無難を期してスキーを外す。
入笠山への登りは急な岩場ルートは避けて、迂回ルートを進む。頂上直下百メートルでスキーをデポして、スキー靴で登る。道はしっかりと踏み固められており、アイゼンはいらない。
ところで、入笠山には犬連れの登山者がやたらと多い。それもハスキーなどの大型犬だ。ゴンドラに犬の同乗が認められているからだろう。犬に囲まれた私は「ここはアラスカか?」と思わず呟いた。
入笠山山頂は、三十人ほどの登山者でごった返していた。ほぼ全員スノーシューだ。スキーで登ったのは我々だけのようだ。展望は素晴らしく、八ヶ岳、北アルプス、甲斐駒ヶ岳、富士山が眺め放題だ。山頂の看板を手に持って記念撮影し、昼食を摂って下山開始だ。晴れていて風がないから快適だ。
スキーデポ地点に戻ると小池氏が言う。
「スキー担いで登山道下りる?」
確かに深雪の樹林帯を滑るよりは早いだろう。さりとて我々はバックカントリースキーヤーだ。それではスキーヤーとしてのプライドが許さない。登山道から外れて樹林帯の中を滑ることにする。倒木が雪に埋まっており、予想していたほど難航はしなかった。
登山道に一旦合流し、尾根上部から再び樹林帯に突っ込み、花畑のトップに出る。視界が開けたところで思い切り花畑の斜面をスキーで楽しむ。こんな雪質の良い年はめったにないので、この日の幸運を神に感謝したい。
入笠湿原への下りは、山彦荘の百メートルほど手前で、樹林帯を斜滑降した方が楽だ。山彦荘まで行ってしまうとゲートがあるので、一回スキーを脱がなければならない。
入笠湿原からの復路は林道を登る。行きと帰りは違う道の方が面白い。ゴンドラ山頂駅からは全長三キロメートル、スキーゲレンデとしては超ロングコースが我々の前に立ち塞がる。ほとんどが中級者コースだが、一部上級者コースもある。入笠山を往復して来たので、足にかなりの疲労がたまっている。もう、フォームなどどうでもいい。早く地上に降りたい。それにしても三キロメートルの滑降は六十を超えた肉体には辛い。休み休み下る。
帰途、つたの湯の露天で、湯気に包まれた二人はどちらともなく呟いた。
「入笠山バックカントリースキーの核心部は、最後のゲレンデ滑降だったなぁ」
(中安)
